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2021.03.31

トレラン初心者も必見!アスリートと語る、シューズ選びとトレーニング方法

【トレイルランニング座談会 前編】今回はトレイルランナー有志9名が4名のコロンビアモントレイルアスリートを迎え、トレランならではのトレーニング方法やオールラウンドに使えるシューズの選び方など、疑問点を本音で語っていただきました。

健康志向の高まりによるランニングブームの影響からか、ランナーの世代の幅が広がっているトレイルランニング。今回は、コロンビアモントレイルアスリートの上田瑠偉選手、大塚浩司選手、三浦裕一選手、柿本恵理選手の4名にトレイルランナー有志9名がさまざまな質問をぶつけました。4名それぞれのスタイルがあり、大いに盛り上がった座談会の様子をお届けします。

※この記事は、CSJ magazineで2019.9.10に掲載された「コロンビアモントレイルアスリートと語る トレイルランニング座談会 前編」の内容を再編集し、増補改訂したものです。(着用ウェア、掲載商品は取材当時のものとなりますので、一部取扱がない場合がございます。)

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どうせトレランをやるなら自分で大会も開きたい

──最初にアスリートのみなさんに、トレイルランニングを始めたきっかけを教えていただけますか?

上田選手:駅伝をやっていた高校時代にトレランのことを知り、漠然とやってみたいと思いました。ただ、トレランは装備品などにわりとお金がかかるので、始めるのは社会人になってからかなぁと思っていました。大学生の19歳のとき、10代最後の思い出づくりにと100キロマラソンに挑戦し、5位に入賞。そのときに、今僕の上司でもあるコロンビアの牧野さんという方が、「若い人でこういうウルトラをやるのは珍しいね」と声を掛けてくださったのが、トレランを始めるきっかけになりました。

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▲上田瑠偉選手。ショートからロングまでマルチな距離で結果を残している、日本を代表する若手トレイルランナー。

大塚選手:昔、長野市内でアウトドア専門のフィットネスクラブをやっていたとき、プログラムのひとつにトレランがありました。それで会員さんと一緒に山に行って走ったのが始まりです。その頃、金融ショックがあって勤めていた金融関係の会社を辞め、気持ち的に鬱々としていたんですが、山を走ったら「こんなに楽しいことがあるんだ!」って気持ちがパーッとひらけた。そして、どうせトレランをやるなら自分で大会も開きたいと思い、運営も一緒に始めるようになりました。

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▲大塚浩司選手。Nature Scene代表取締役。長野を拠点に様々なアウトドアプログラムを企画。トレイルランニングレースの大会運営を行う傍ら、自身でも月1でレースに参戦する。

三浦選手:大学の頃にマラソンをやっていて、その練習の一環で大会をいろいろ調べていたときにトレランの大会を見つけました。トレランを知らなかったのでなんだろうと思ってエントリーしたら(笑)、山を走る大会でした。実際走ってみたらすごいヘンなところを走るんだなと思いましたが、準優勝してしまって……。年1回のペースでこの大会だけ走ろうかなと始め、2014年から本格的にやるようになり、今に至ります。

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▲三浦裕一選手。バーティカルレースからロングレースまで幅広い分野で好成績を残し、現在はスカイランニングの日本代表選手として、海外のレースでも活躍している。

柿本選手:ずっと陸上をやっているんですが、トラック練習の仲間のひとりがスカイランニングの選手で、「ユース選手としてやってみたら?」と誘われたのが最初です。ギリギリ、ユースで挑戦できる年代だったので、思い切って挑戦してみました。山は走ったことがなかったので、上田選手にいろいろとアドバイスをうかがったのを覚えています。

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▲柿本恵理選手。トレイルとマラソンを続けながら年間30レース以上に出場。数多くのレースで結果を残している注目の女性若手ランナー。

初心者からエリートまで使えるシューズだと思います

イトウさん:もともと自分に脚力があまりないということもあると思いますが、トレランが終わって駅までの道のりが2〜3キロあると、その歩いている途中で結構疲れが出てしんどくなります。今はトランスアルプス F.K.T. II UTMBを履いていますが、ちょっと硬いかなと感じていて。シューズの選び方で気をつけていることをうかがいたいです。

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▲東京都在住のイトウさん。トレラン歴3ヶ月。

上田選手:今、イトウさんが使われているのは剛性が強いというか、ゴツゴツしている岩の上を走るときに向くシューズですね。ロードとか走りやすいところを走るのであれば、それ以外のシューズがいいです。僕はログF.K.T.を好んで履いています。ランニングシューズに近い軽さもありますし、それでいてしっかりグリップも効く。バハダは初めて履いたシューズです。陸上をやっていた身からすると、重いなという第一印象はありましたが、履いてみるとフィット感がよくて重さを忘れるくらい軽快に走ることができた。クセもなくて柔らかさを感じられます。

三浦選手:僕はトレーニングに関しては、スピードを出すときはフリューイッドフレックスX.S.R.という一番軽いモデルでクッション性のあるものを使って練習をやっています。山に走りに行くときは、安定性のあるバハダかカルドラドです。練習で怪我したら元も子もないので、山での練習はスピードを追い求めることはしません。登りだけの練習をするときは、軽めのシューズを履いたりもしますが、ぐるーっと回ってある程度距離を踏んで帰ってくるのであれば、クッション性のあるシューズと比較的スピードの出るシューズだと翌日の疲れ具合がまったく変わってきます。もちろん、クッション性のあるシューズのほうがダンゼン疲れが残りにくい。練習の内容によって、シューズを変えるのもいいと思います。

──シューズはそんなに安いものではないのでいくつも持つのは難しいかもしれませんが、せめて2種類くらいは持っていたほうがいいということですかね?

三浦選手:一般の方におすすめするとしたら、やはりバハダかカルドラドですね。どちらも比較的安定性の高いシューズなので。もしこれらのどちらかを持っていて、もっと安定して距離を踏みたいならばトランスアルプスとか、逆にスピードを出したいならばログF.K.T.とか、特徴の異なるシューズを1足ずつ持つといいと思います。

上田選手:イトウさんが履いているトランスアルプス F.K.T. II UTMBは、僕も持っていますが、このシューズは山岳地帯を走るのには本当に打ってつけ。でも、最後のロードには向いていない。これをお持ちであれば、もっと走りやすいシューズをチョイスすればいいと思います。一般ランナーの方は、スタート地点で渋滞するのでそこで長い時間歩いたりすることも多いから、歩きやすくてフィッティングのよいシューズを選んでほしいですね。

大塚選手:僕はずっとバハダですね。オールラウンドに使えるから、初心者に必ずおすすめしています。

上田選手:そこは間違いないというか、初心者からエリートまで使えるシューズだと思いますよ、バハダは。実際僕もハセツネCUPの大会記録を出したときに履いていたのはバハダでした。古いモデルだったけど。

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▲シューズについて熱く語る上田選手。

僕は食事に関してはまったく気にしていません

ワタナベさん:大会当日は、おにぎりなどのシンプルな食事しかとっていません。トップアスリートのみなさんは、大会当日は何を食べていますか? また、普段の食事で気をつけていることなどがありましたら教えてください。

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▲東京都在住のワタナベさん。トレラン歴4年。

大塚選手:昔はどんぶりメシで1回3合とか食べて、パワーをつけるぞ! って感じの食事でしたが、45歳になり、年齢とともにさすがに胃が受け付けなくなってきました。練習で追い込み過ぎても、水を飲みすぎても胃がやられる感じ。最近は大会の1週間前から炭水化物を抜き、繊維質の多い野菜中心の粗食にして少しでも体に飢餓状態を感じさせ、3日前から少しずつ炭水化物をとるようにしています。レース15時間前くらいから、つまり大会当日は何も食べない。食べてしまうと胃がやられることが多いので。

三浦選手:僕は食事に関してはまったく気にしていません。気にし過ぎるとストレスがたまってしまうので、自分の食べたいものを食べるようにしています。大会の前日は、お腹が気持ち悪い状態で寝たくないので、夕食を抜くことはありますね。僕の場合、お腹をすかせて寝ると翌朝のお通じがよくなるので、体がスッキリするんです。当日の朝は、炭水化物をメインにしてしっかり食べます。

柿本選手:私はレーススタートの2〜3時間前の間に食事をとるようにしています。よくそれだとお腹が痛くなったりしない? と聞かれますが、トレランは距離が長いのでスタミナが必要。それくらいの時間帯にとるのが私には一番合っているみたいです。普段の食事で特に気をつけていることはありません。ある程度バランスを見ながらタンパク質をとるくらいですかね。最近は、トレーニングの後にプロテインをとるようにしています。

上田選手:僕はよく海外遠征に行くので、現地のレストランでも大丈夫なように日頃から何でも食べるようにしています。レース直前はご飯を食べたいのでアルファ米を持参し、炊いて食べています。レース直前は、チーズは食べないようにしています。特にラクレットなどのとろける系。食べると胃にへばりついて、レース中にとるジェルの吸収を妨げますから。繊維質もあまりとり過ぎるとジェルの消化を妨げます。お通じをよくするために繊維質は必要ですが、前日はとらないほうがいいですよ。

大塚選手:お酒はやめてみましたが、何も変わらないです(笑)。

一度は経験してイメージをつかんでおくこと

かすみさん:これから大会に出るとなると、夜間に走ることもあると思います。その場合に、夜間練習はどうしたらいいでしょうか? 近所に山はありますが、夜間にひとりで行くのは怖いですし……。

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▲群馬県在住のかすみさん。トレラン歴2年。

大塚選手:夜間走のあるレースに出るならば、一度は山での夜間走の練習は必要ですね。でも1回やれば十分で、何回もやる必要はありません。暗い山道を経験しておけば大丈夫。夜に走ると視野が狭くなるし、霧が出たりしたら周りがまったく見えなくなるなど、いろんな状況が起こる可能性があります。だから、とりあえず一度は経験してイメージをつかんでおくこと。夜間走しているチームがあると思うので、一緒に混ぜてもらうとか。夜間走はこういうものだというイメージがつかめれば、本番もそんなに心配はありません。

上田選手:山での夜間走練習は一度しかやっていません。練習してもレースとは状況が違いますからね。前後に人がいたりして明るさも違ってきたり。1〜2キロくらいやるだけでいいと思います。長い時間やると怪我などのリスクも高くなりますから。

大塚選手:ライトの使い方の練習はしておいてくださいね。

三浦選手:2014年に初めてハセツネCUPに出たとき、夜間走もぶっつけ本番でやったらライトが消えて周りがまったく見えなくなってしまった。それで、暗闇で電池を変えるのにすごく戸惑ってしまったんです。ですから、暗闇でも電池を変えられるようにしておいたほうがいいです。初めての方は、暗闇が怖いというのが先行しちゃって、足が前に出なくなってしまいがち。とにかく暗い状況に慣れておくのが大事だと思います。まずは、見知ったコースを暗い状態で走ってみる。見知ったコースならマンホールや溝の場所はなんとなくわかると思うので。僕も最初は暗闇を走ったときにちょっと怖いと思いましたが、2回目以降は暗いほうが楽しくなった。楽しくなっちゃえばスピードも出せるようになるし、周りの物音もそんなに気にならなくなりますよ。

大塚選手:ライトはつける位置によって光の揺れ方が変わってきます。頭につけるとすごく揺れるし、腰につけると安定して全然揺れないとか。揺れる光をずっと見ていると、具合が悪くなることもある。どこにつけたら走りやすくなるのかという練習も必要です。

上田選手:僕は腰につけることで足元を照らして、頭につけたほうで前方を照らす。手持ちで照らしたいという人もいるし。

大塚選手:レースのときは意外と明るいよね。

上田選手:後ろの人のライトで結構明るくなるんですよね。それは実際のレースでないとわからないですからね。

大塚選手:ハセツネCUPは手を使うようなところもあるのでハンドライトは障害になる。下りだけハンドライトを使うとか。そういう使い分けの練習を暗闇でしておくといいですね。あと、パッキングの位置をしっかり決めておくこと。適当に入れていると、暗くて見えないということがあるから。

三浦選手:とにかく、夜間に山にひとりで入って練習するのはとても危険です。ひとりではやらないでください。

普段から階段を使うようにしています

タカさん:ロードを始めて4年くらいで、毎日走っています。トレランの場合は、どれくらいの頻度で山で練習すればいいでしょうか。また、山は下りの坂道ですごくスピードが出てしまったりします。トレランで注意すべきことを教えていただけますか?

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▲茨城県在住のタカさん。トレラン歴数ヶ月。

上田選手:毎日山に行く必要はありません。山を走るにしても基本的な走力が必要なので。ロードでの練習が重要。タカさんは毎日ロードを走っていらっしゃるので、プラス山に週1回行けば十分です。山でしかできない練習、登りと下りだけをやってみるとか。下りも慣れれば大丈夫。恐怖心はなくなってきますよ。だから継続的に練習しないとダメ。1ヶ月とかあけるとまたリセットされると思うからコンスタントに。僕の場合、登りは最初から得意だったけど(笑)。トレッドミルを15%の傾斜にして1時間走るとかの練習をしていました。15%よりも緩い傾斜にし、ペースを上げて追い込んでみるのもいい。下りに関しては、僕は長野の出身で小さい頃からスキーで遊んでいたから恐怖心というものがなかった。自分で走るよりも速いスピードで下るスキーなどの違うスポーツをやってみるのもいいと思いますよ。

大塚選手:僕は山が近いので、山練しかやっていない。周りの人に聞くと山練は週1とかが多いかな。慣れるために山に入ることは大切です。レースだと人のペースに惑わされるので、自分のルールを作っておくこと。下りはみんなスピードが出ちゃうので飛ばす人も多いけど、それに影響されないように。怖いと思うのは練習で慣れるしかありません。それで、自分が怖くないスピードを見極めて、それを守ることですね。

柿本選手:山は週1行ければいいほうです。山によって特徴も違うし、山に行くと疲労がすごくたまるので、山練はそんなに重要視していません。ロードの練習をしているので、それがトレランにつながると思っています。

上田選手:息がゼエゼエをあがるような練習をしておけば、登りになったときも今までトレランで歩いていた傾斜を走れるようになるかも。日頃からロードを走るときも、たまに息があがるようなダッシュを入れてみるのもいいと思います。

三浦選手:僕が今住んでいるところからだと、どこの山に行くにも1時間ぐらいかかります。だから練習という意味ではほぼ山に行きません。普段のロードの練習でアップダウンのあるところを見つけ、そこで上りと下りのトレーニングをしています。皆さんの家の近所にも探せば絶対にアップダウンのある道があるはずですよ。

上田選手:僕は普段からエスカレーターを使わずに階段を使うようにしています。これは駅伝をしていた高校生のときからずっと続けています。

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▲向かって右からメンズ アルパインFTG、カルドラドⅢ、ヴァリアントX.S.R.、ログF.K.T. Ⅱ、バハダⅢ、その奥はレディース。

Photos:小関 信平

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2021.03.31