代表作『山と食欲と私』は累計150万部を超え、コロンビアとも数多くのコラボレーションしている漫画家・信濃川日出雄さんが家族とともに東京から北海道へ移住し、自然に囲まれたアウトドアな日々を綴る連載コラム。今回はお腹も心もポカポカになる、薪ストーブで作る料理にまつわるストーリーをご紹介。
※この記事は、CSJ magazineで2021.3.15に掲載された「地方暮らしに憧れる人々に贈る、東京→北海道移住エッセイ OPEN THE DOOR No.7」の内容を再編集し、増補改訂したものです。(着用ウェア、掲載商品は取材当時のものとなりますので、一部取扱がない場合がございます。)
長引いてしまっている薪ストーブ話。
第4回は「導入」を、第5回は「薪割り」、第6回は「薪集め」のお話を綴った。
今回は「料理」について。
薪ストーブ話はこれでラストだ。
もちろん料理もできるのである。これを語らねば、魅力の半分も語れていないことになる。
家を暖めてくれるだけではない。お腹も心もポカポカである。
のせる
まずは小ネタ集。
冬は毎日焚くもの。薪ストーブは日常のパートナーである。
火を焚けば天板は当然熱くなる。やかんをのせて常にお湯を沸かしておくのは基本として、“鍋をのせて何かを煮込んだり、味噌汁やカレーを温め直す”のも、いつものこと。
今回はそれよりほんのちょっとだけ工夫して使う薪ストーブの活用法をご紹介。
まずはお手軽に、天板にのせるだけ編。
(1)小さな琺瑯製の鍋でバターを温める
食事が始まる5分前で良い。カップサイズの小さな片手鍋に、バター片と、オリーブ油、塩こしょうなどのスパイス、ハーブをお好みで入れて天板にポンとのせておく。
あっという間にバターが温まって溶け出すので、これを蒸したジャガイモやブロッコリーなどの野菜にかけて食べるもよし、パンにつけて食べるもよしである。
(2)自家製・食べるごま油(?)
こちらも食事が始まる前のちょっとした時間に。
シェラカップに、しょうがやニンニクを刻んだものと、ごま油をお好みの量だけ入れて、天板にのせてグツグツと”アヒージョ”。具材が素揚げされるまで、10〜15分程度が目安。細かく刻めば、それだけ早く火が通る。白ごまや唐辛子、山椒など他に薬味を加えるのも良いし、醤油を入れてもいい。
ごま油ではなくラー油を使えば、自家製食べるラー油の出来上がりだが、我が家は小さな子供もいるので、辛味成分を抑えてごま油で香ばしく。
ごはんのお供や、冷奴、焼肉と合わせたり。いろいろ使えて美味しい!
(3)ひたすら煮込んでお肉を柔らかく!!
長時間の煮込みは、薪ストーブ料理の真骨頂ではないだろうか。
普通の鍋でもいいが、鋳物のスキレットが特に相性が良い。
スペアリブやスネ肉、軟骨、鶏肉であれば手羽先や手羽元など、なんでも良い。硬いお肉や骨付きのお肉と調味料と水を入れて、蓋をして天板にのせ、丸一日火にかけておく。この写真の例では、豚のスペアリブに塩胡椒、醤油、砂糖、みりん、酒と、ごくシンプルな味付け。
あとは薪ストーブにお任せ。もう何もする必要はない。
ストーブ本体と鍋から発せられる遠赤外線、そして“長い時間”がお肉の芯まで柔らかく、最高の料理に仕上げてくれる。どんなお肉料理もお箸で持っただけで崩れる。ホロホロである。
ちなみに、こうした長時間の煮込み料理は家の隅々まで美味しそうな匂いが届いてしまうので、お腹が減ってしょうがないということも書き添えておく。
2通りの方法でパンを焼く
(4)天板の上にアルミホイルを敷いて、フライパンがわりに
写真の通り、超シンプル。
焚きつけ後の火力が高い時がベストタイミングだ。
ゆえに、朝起きる→薪ストーブを着火→家族を起こす→パンをのせて焼き→朝食に、というのがとても自然な流れ。同時にお湯を沸かしたり、スープも作るし、もちろん、おにぎりを焼いてもうまい!
(5)生地を炉の中に突っ込んでパンを焼く
薪ストーブの炉内をオーブンのように使えば生地から焼けちゃう。
温度管理には経験と勘が必要になってくるが、ここは難しく考える必要はなく、電気で使うオーブンレンジと同じ。200度前後で、火加減を見ながらでOK。
薪がごうごうと燃えている時は適してない。燃やし始めから数時間後、ストーブの温度がしっかりと上がって、薪の火が落ち着いた状態=「熾火(おきび)」になったら。タイミングはその時である。
フライパン用の台か、または耐火レンガを入れ、生地を並べたフライパンを入れる、という手順。
上手くできたら大満足。焼き立てのパンは文句なしに最高にうまい!!!