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2023.07.19

夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

夏の登山を思いっきり楽しみたいけど、やはり気になるのは「日焼け」。自身が辺境クライマーでもあり、国際山岳医の小阪健一郎先生から、日焼けのメカニズムから効果的な対策をレクチャー!

強い日差しが照りつける季節、アクティブにアウトドアを楽しみたい気持ちとは裏腹に、やっぱり気になるのは「日焼け」。とくに、太陽に近く日陰も少ない登山シーンでは、肌への負担が心配ですよね。今回は、辺境クライマー・けんじりとして活動を発信する国際山岳医の小阪健一郎先生に、日焼けのメカニズムから効果的な対策とポイントについて解説していただきました。

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▲小阪健一郎先生

IMG_2894 夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

高い山ではUV-Bにご注意を!日焼けのメカニズムとは?

━━登山時はさまざまな皮膚トラブルがつきものですが、暑い季節とくに注意したい日焼けについて、まずはそのメカニズムを教えてください。

日焼けとは太陽光線に含まれる紫外線によって皮膚が傷害されること。紫外線には波長の長いA波(UV-A)と波長の短いB波(UV-B)があり、UV-BはUV-Aよりも何百倍〜何千倍もパワーが強いです。ただし、波長が短いほど基本的には大気中で減弱していきますので、日常生活で比率を占めているのはUV-A。一方、気象庁によると、UV-Bは標高が1,000 m上昇するごとに10〜12%増加するため、登山中はより日焼けをしやすい環境になるわけです。

UV 夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

▲イメージ図

一にも二にもまずは日焼け止め!効果的な日焼け対策

━━パワーの強い紫外線を浴びることになる登山では、日焼け対策もより入念に行う必要があるのでしょうか?

山だからと必要以上に怖がることはありませんが、とにかく大事なのは“日焼け止めを塗る”こと。日焼け止めに使用されている紫外線カット成分には、「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」の2種類があります。「紫外線散乱剤」はベールで光を反射させて肌を守り、「紫外線吸収剤」は真っ黒なカーテンで光を吸収するイメージです。どちらがより山に適しているということではなく塗りやすさや好みで選んでいただいて良いと思いますが、肌が敏感でかぶれやすい方には「紫外線散乱剤」のほうがおすすめです。

DSC_3086 夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

▲©Columbia Sportswear

━━日焼け止めの「SPF」の数値はUV-Bを、「PA」の+はUV-Aの防止効果を示す指標ですよね。先ほど、高い山ではUV-Bの比率が高くなるというお話がありましたが、SPFの数値は高いものを選ぶべきなのでしょうか?

山に行くからなにか特別な対策が必要ということはありません。たしかに、数値やプラスが大きいほどブロック効果が高いという意味ではありますが、SPF30/PA++ぐらいのものであれば十分。SPFが50もあればそれ以上数値が高くても大きな違いはありませんし、それよりもこまめに塗り直すほうがずっと効果的です。

━━出先で塗り直す場合は、一度肌を拭いたり保湿をする必要はありますか?

いえ、上からどんどん塗り重ねていただいて大丈夫です。保湿などは必要だと感じるのであればやっていただければいいと思います。基本的には、汗で流れないウォータープルーフタイプを使用するといいでしょう。また、衣類だけでは紫外線を透過してしまいますので、ぜひ日焼け止めとの併用をおすすめします。とくに登山シーンではUV-Bの透過率が低いポリエステル素材のものを選ぶと良いでしょう。

DSC_2853 夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

▲©Columbia Sportswear

━━その他、効果的な日焼け対策について教えてください。

「蛍光増白剤」配合の洗剤を使うのもひとつの手です。「蛍光増白剤」とは、吸収した紫外線を青白い光に変換することで衣類の見た目を白く見せる成分なのですが、これを使って衣類を洗うことで紫外線カット効果が得られるようです。もう少しマニアックな話になると、色によっても紫外線透過率が変わるそうで、黄色い服は透過率が下がるという研究結果があります。

シミ・しわ・たるみ……日焼けによる肌への影響

━━しっかり日焼け止めを塗った上で、そうしたアイテムやアイデアを併用できるといいですね。逆に、日焼け対策をしないことによる影響とはどんなものでしょうか?

皮膚の傷害以外にも、紫外線はシミやシワ、たるみといった老化につながります。たとえば、トラックのドライバーは運転席のある右側から日差しを浴びることから、顔の右側にシミやたるみが表れやすくなるといいます。写真を検索するとそうした事例がたくさん出てきますし、長年の紫外線の影響は一目瞭然です。さらには、皮膚ガンにつながる可能性もあります。もちろんスキンタイプによる日焼けのしやすさ・しにくさもありますが、紫外線を気にせず過ごしている人と対策している人とでは、ゆくゆく差が出てくることはたしかです。

━━アウトドアシーンだけでなく、日常生活でもこまめなUV対策を心がけたいですね。では、紫外線をしっかり浴びてしまった場合のケアについて教えてください。

日焼けにより肌が真っ赤になってヒリヒリと痛むようであれば、その日中に冷やしたり、ステロイド外用薬(体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用を持つ皮膚用薬)を塗ると有効です。ただ、事後のスキンケアよりも、事前に日焼け止めを塗って対策することのほうが重要です。浴びてしまったものはゼロにできませんが、日焼け止めをしっかり塗って、とにかく紫外線を直接浴びないように心がけてもらえれば過度に心配することはないと思います。

DSC_2898 夏の登山、もう日焼けは怖くない!山岳ドクターに聞くUV対策

▲©Columbia Sportswear

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2023.07.19