競技人生でここまで思い通りにならないシーズンは二度とない

──上田さんだからこそ何があってもリタイヤしなかっただろうし、ましてやこのインタビューだからこそ包み隠さず心情を吐露してくれたのだと思います。改めて今季のシーズンをどう振り返りますか？
いまだに不調の原因は不明ですが、何年後かに振り返ると、コロナ禍で起こったさまざまなイレギュラーに適応できなかった年、という括りになると思います。結果は不本意ですが、おっしゃっていただいたように、それでも最後のレースでリタイヤしなかったという事実は、一つの形として残せたものになったと思います。

──そして当然、すでに来シーズンを見据えている？
背中の痛みに関しては、今年のトレーニングを含め標高の高いところでプレイしすぎたせいかもしれないとトレーナーと話し合っているので、改善策を見つけられるでしょう。それから距離に対して抵抗感が出てきたので、来シーズンに入る前にはもう一度長い距離に自信を持てる練習を行います。1回走っちゃえば、必ず取り戻せます。

──狙っている大会は？
これまでと違うシリーズ戦に出たいと思っていますが、2年置きのスカイランニング世界選手権は2022年にもあるので、まずは連覇を。2月には今年出場権を得たマウンテン＆トレイルランニングの世界選手権が開催されます。来年はこの2つのタイトルを獲りたいです。ただ、コロナ禍の状況によっては大会開催の延期もありますからね。とにかく2週間の自主隔離だけはなんとかしてもらいたいです。部屋から一歩も出られないと時差調整もできず、不眠症になるんですよ。ホント、大変……！

──やはりこの2シーズンは、新型コロナウイルスの影響が大きかったんじゃないでしょうか？ 特に海外を行き来するアスリートには、実際に不運しかなかったわけですし。
本音の部分では、「僕のせいじゃない」と叫びたいです。海外選手がよく口にするように、「今日は自分の日ではなかった」と責任転嫁したほうが楽かもしれません。考えすぎたせいでドツボにハマったところがあったし。けれど競技人生でここまで思い通りにならないシーズンは二度とないでしょうから、来シーズンは必ず良くなると信じて、また走り出します。

※ソーシャルディスタンスを保ち、十分に安全を配慮したうえで取材を行っております。

Text：田村 十七男
Photos：大石 隼土