人気コミックエッセイ『山登りはじめました』の執筆をはじめ、登山のさまざまな楽しみ方を伝えてきた鈴木ともこさん。そんなともこさんが北八ヶ岳の山小屋“しらびそ小屋”を訪れ、ご主人に山小屋の魅力やコロナ禍での変化についてのお話を聞いてきました。記事の最後には、プレゼントキャンペーンのお知らせもあるのでお見逃しなく!
山の楽しさを伝える人気コミックエッセイ『山登りはじめました』の著者である鈴木ともこさんが監修するコロンビアのコラボコレクションは、2021年で6年目。最新の『2021春夏 ENJOYシリーズ』もともこさんのアイデアの詰まった、山に行きたくなるコレクションになっています。
そんな長年のパートナーである鈴木ともこさんとコロンビアの商品開発担当とで、ともこさんが大好きな山小屋、北八ヶ岳にある“しらびそ小屋”を訪ねました。
山行の目的のひとつは、コラボ商品のフィールドテスト。新たな商品のアイデアを生むための意見交換をしながら、天気の良い北八ヶ岳の道を歩きます。
コースタイム2時間の道を、撮影をしながらゆっくり歩いて3時間。標高2,097m、みどり池の畔に建つしらびそ小屋に到着。
薪ストーブの煙がのぼる、温かな山小屋。昼食をとった後、池の畔でコラボ商品会議。
今回の山行のもうひとつの目的が、コロナ禍における山小屋の状況を知ること。1962年から三代に渡り、しらびそ小屋を守り続けているご主人・今井孝明さんにお話を伺いました。
山小屋60年の歴史で初めて
──小屋ができて60年。今回のコロナ禍のような経営危機はあったのでしょうか。
孝明さん:いや、ないですね。初めて。いまだに夢を見てるような気分ですよ。山小屋って元々が“密”になるような作りだから。密を避けるとなると……1から考えなきゃならない。
最初、(2020年4月の)緊急事態宣言が出された時は、また小屋を開けられるだろうかと、眠れないほど不安でした。山小屋にも休業要請が出て、どこも営業自粛になりました。その間はとにかくできる事を考え、営業再開に向けた準備をしていました。山小屋は基本が“雑魚寝”みたいな感じだから、まずはそれをどうにかするためにいろいろ試して。カーテンを一人一人の間に入れたり、板で仕切ってみたり。
結局、個室化に落ち着きました。談話室もあったんですけど、人が集まっちゃいけないので、それもつぶして全6室の個室になりました。
──定員を大幅に減らして?
孝明さん:そうですね。元々40人だったのを15人に。ただ、各個室で1グループにしているので、1人でいらした方が6組ってなると、6室で6人。今は、定員いっぱいになることはないですね。
──密を避けて楽しめるキャンプが流行っています。テント場の利用は?
孝明さん:テント泊のお客さんはすごく多かったですよ。小屋泊のほうは、食事スペースなんかも対面にならないようテーブルの配置を変えたり。軽食は紙皿を用意して、夏場は外で食べてもらったりもしました。ただ冬になると、お客さんに外で食べてって言うわけにもいかないです。寒い中、食事休憩のためにいらしたお客さんに、小屋が密になるのを防ぐために小屋に入るのをお断りしたことも。これは本当につらかった。心が痛かったです。
ともこさん:冬は換気のシステムを工夫されていましたよね。
孝明さん:そう。夏は窓を開ければ換気できるけど。冬は風も強いし、乾燥もあります。なにより暖気が外に逃げちゃうから、普通の換気扇では無理でした。それで熱交換システムを入れなきゃって事になって。結構なコストもかかるし、冬の間は小屋を閉めようかなとも考えました。でも、小屋泊ツアーの予約も20組ほど入っていたので休むわけにはいかなくて。
ともこさん:冬のしらびそ小屋は、雪山ハイクの人気ルートですもんね。
孝明さん:ツアー・団体客となると、換気のために熱交換システムを入れる必要があって。年末年始は小屋を閉め、大幅な工事をしました。でも結局、新型コロナウイルスの感染拡大でツアーはすべてキャンセルに。八ヶ岳は通年営業の山小屋が多いのですが、冬はどこも本当に大変だと思いますよ。
支援の声に力をもらった
ともこさん:コロナ禍での困難がある一方で、前向きになれたことは何かありましたか?
孝明さん:やっぱり、支援の声です。小屋が大変な状況だからと、わざわざ寄付金を持ってきてくれる方がいたり。お手紙や応援の電話もありました。
あと、山小屋支援のクラウドファンディングも大きかったです。『山と溪谷社』さん、YAMAPさんの呼びかけで支援が広がって。あれほど集まるなんて思っていませんでした。本当にありがたかった。こんなにも山小屋を応援したいという人がいることを実感して、それでがんばろうと思えました。
ともこさん:私もこの1年、立ち止まったからこそ気づけたこともあると感じています。山小屋のおかげで山の楽しみ方の幅が広がり、登山文化が継承されてきました。
美しい山と、そこに集う人を守り続けている山小屋への感謝と、「また山で会いましょう!」という願いが支援に表れていたように思います。
ともこさん:この1年、孝明さんの心を支えていたものはなんでしょうか?
孝明さん:何もかも初めてのことで不安だったし、眠れない夜もたくさんあった。でもやっぱりお客さんからの「がんばって」の声ですかね。本当にうれしかった。こういう時じゃないと気づけないようなことでした。
ともこさん:応援されることは力になりますが“応援する”ことも力になると私は思っています。「がんばって」の言葉には、自分も「がんばろう」も込められている気がします。コロナ禍で当たり前のことができなくなって、変わってしまったこともたくさんあります。でも私は、“選択肢が増えた”いい変化もたくさんあったと思うんです。例えば、私も山でのイベントがすべて中止になり、バーチャルで楽しんでいただく“オンライン登山ツアー”を開催しました。新型コロナウイルスに関わらず、これまで山に行きたくても行けなかった状況の方……お体の不自由な方や海外を含めた遠方在住の方が喜んで参加してくださいました。「変わってしまった」と嘆くよりも「変えられた。広がった」ととらえるだけで、心が上向きになり、できることが見えてくると感じます。
窓辺に山とリス。特等席の朝食
ともこさん:コロナ禍が落ち着いたら、個室の仕切りなどは元に戻すのでしょうか?
孝明さん:いや。実はコロナ禍の前から客室を二段ベッドにして定員を増やしたり、個室化も考えていたところもあったので。コロナ禍がきっかけで、進んだ部分もありますね。
ともこさん:大部屋で雑魚寝……というのが、山小屋泊のハードルになっている方も多いので、仕切りや個室はとてもありがたいです。これなら泊まりたい! という方も増えそう。その上で、また談話室でワイワイできたら……最高ですね。
孝明さん:そうですね。天狗岳を見ながら食事できるカウンター席もできましたしね。
ともこさん:窓辺のカウンターは特等席! 指定席料を払ってでも、ここで食べたいと思っちゃいます(笑)。
孝明さん:この席で食べたいってよく言われますよ。ここでリモートワークしたいって相談された事もありました(笑)。
ともこさん:登山は“早出早着”が原則と言われますが、しらびそ小屋は朝の時間が格別なので、できるだけゆっくりと過ごしてもらいたい。光を浴びて色を変える山と池を眺めているだけで心が充電されます。
孝明さん:朝の景色とトーストはね、本当におすすめ。時間がかかるのでこれまでは数量限定で、希望されても出せないこともありました。今は定員を絞ったので、泊まってもらえれば食べられますよ。
ともこさん:定員を減らしての営業は、利益の面で本当に大変だと思います。私たちにとっての“特等席”は、“人の安全を守るため”に考えてくださった結果の副産物ですね。
──コロナ禍で混雑が緩和された今の山小屋なら行きたいという方も多そうですね。
孝明さん:そういう声もありましたよ。今はどの山小屋も定員縮小していて「これまで混雑して行きづらかった小屋も快適です」って。だったら行ってみようと、コロナ禍をきっかけに感染予防対策をしながら登山をはじめた方もいらっしゃいます。うちの小屋でも検温をしているのですが、お客さんの中にはわざわざご自分の体温計で測ってから入室してくださる方もいました。山小屋を感染源にしてはいけないという、強い気持ちの表れだと感じてとてもうれしかったです。
ともこさん:コロナ禍だからこそ、山や自然の魅力に気づいたという方もたくさんいらっしゃいますよね。
孝明さん:新たに山を好きになってくれた方たちが、コロナ収束後に“帰ってくる”場所になれたらいいな。
ともこさん:「ただいま~」って私も言いたいです(笑)。山を登れることは幸せですが、登れないときも「山が好き!」と言える……山に出会えた人生が幸せだなと思います。
6年目のコロンビア×鈴木ともこコラボ『2021春夏 ENJOYシリーズ』
“自分らしく山を楽しんでほしい”という想いを込めたENJOYシリーズ。山で使える機能を備えた鈴木ともこさんとコロンビアのコラボ商品は、今シーズンも魅力的なアイテムがラインナップされています。
記事内でご紹介したソックスを含め、鈴木ともこさんの想いがつまった『ENJOYシリーズ』はコロンビア公式サイトで是非チェックを。
※ソーシャルディスタンスを保ち、安全に十分に配慮したうえで取材を行っております。
【プレゼントキャンペーン】
鈴木ともこさん直筆イラスト入り『しらびそ小屋限定手ぬぐい』を5名様にプレゼント。
『しらびそ小屋限定手ぬぐい』に、鈴木ともこさんにイラストを添えていただきました。コロンビアと鈴木ともこさんのコラボアイテムをご自身のInstagramにアップいただいた方の中から抽選で5名様にプレゼント。詳しくはコロンビア公式Instagramのキャンペーン投稿をご覧ください。<キャンペーン〆切:2021年5月10日(月)>
プロフィール
鈴木ともこ
漫画家・松本市観光大使。主な著書に『山登りはじめました』シリーズ(KADOKAWA)。北アルプスを望む街に惚れ込み、2011年東京から長野県松本市に移住。テレビやイベントを通じて、山の魅力を発信している。新潮社から発売予定の新作コミックエッセイ(上下巻)を執筆中。
ホームページ:https://suzutomo1101.com/
INFORMATION
しらびそ小屋
北八ヶ岳・みどり池の畔り、標高2,097mにある小さな山小屋。稲子湯登山口から約2時間、天狗岳を望む窓越しにリスや野鳥の遊ぶ、静かで温かな山小屋です。優しいご主人とリスたちが迎えてくださいます。現在、感染予防対策のため月曜日・木曜日定休。
公式ホームページ:https://shirabisogoya.com/
Facebook:https://www.facebook.com/shirabisogoya/
online shop:https://shirabisogoya.stores.jp/
Text:鈴木ともこ
Photos:コロンビアスポーツウェアジャパン