地域の人々にとってサスティナブルは当たり前
2021年3月に、乗鞍高原は「ゼロカーボンパーク」の第一号に認定された。ゼロカーボンパークとは環境省が制定したもので、国立公園において先行して脱炭素化に取り組むエリアを指す。
「認定されたときは、『なにもしてないのにいいの?』という印象でした。でも次第に、薪ストーブやコンポストを使うなど、乗鞍高原の人たちが自然にやっていることがゼロカーボンだったと気づきましたね。ゼロカーボンパークに認定されたことで、ノーススターから自宅まで歩くようになったりと、小さなことですが自分自身にも意識の変化がありました」
乗鞍高原は国立公園内にあるが特別保護区ではないため、人の手が入っている。スーパーもコンビニもない山の上なので、そうした整備はこの地で暮らす人々が連綿と行ってきた。道路の草刈りも、住民が「みんなでやる」ことが文化として根付いているそうだ。
「ここには自然のなかで暮らすための知恵や文化があり、それを学ぶことはとても楽しく、自分の人生を豊かにしてくれていると感じます。乗鞍高原を支えてきた70代の人たちは、木を切ったり、ソバを打ったり、魚を釣ったりと、なんでもできるんです。一方デジタルネイティブと呼ばれる若い世代は、IT技術を使って乗鞍高原のためになにができるのかを考えてくれる。こうした世代間のギャップを程よくブレンドしながら、乗鞍の自然とともにあるよい文化をどう守っていくか、試行錯誤している最中ですね」
PROFILE
山口 謙(やまぐち けん)
千葉県出身。株式会社ノーススター代表取締役。一般社団法人信州・乗鞍グリーンツーリズム副代表。のりくら観光協会企画宣伝部長。乗鞍高原をベースに、登山・バックカントリー・マウンテンバイクと、幅広いジャンルのガイディングを行う。
HP:https://ridenorthstar.com/
Instagram:@ridenorthstar
Text:松元 麻希
Photos:セツ・マカリスタ―