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2021.10.06

富士山ロングトレイル・スルーハイカー第1号へ道のり
〜第3回 ついに完登!“トレイル後半編”〜

富士山1周の最後へ

三ツ峠山荘は、長谷川恒男さんの写真やサインもある、クライマーや写真家に長く愛された山荘だ。天気が良ければ、富士山を最高の姿で眺めることができる。

富士山1周最後の夜は、マウントフジトレイルクラブの太田さんと、NPO法人富士山世界遺産国民会議の大庭さんと三ツ峠山荘で合流し、宿で久々の手料理を食べながら、スルーハイクしてきた道のりについて話したのだった。

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▲バンダナがあれば、マスク会食も安全快適にできる。いちいちマスクを外したり付けたりしなくてよく、飛沫も飛びにくいので、飲食時は必ず使います。

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▲2週間ぶりの手料理(夕食・朝食)に、箸が止まりません!

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▲スルーハイク最後の14日、大庭さんと太田さんに祝福されながら、下吉田駅を目指す。

14日目、最後の道のり。太田さんにガイドをして頂きながら、最後のルートを下っていく。天候は回復の兆しがあったのだが、富士山は、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)は、最後にも関わらず、顔を出してはくれなかった。

徐々にゴールが近づく。

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▲ゴール間近の新倉山浅間公園五重塔慰霊碑

ルートの最後に、あの有名な新倉山浅間公園の五重塔と、散り際のわずかに残った桜の景色を見ることができた。

そして、14日間振りに下吉田駅へと到着し、僕の富士山を1周する旅は終わりを告げたのだった。

富士山1周を振り返る

本来トレイルは頂上を目指すことを目的とせず、山野に付けられた道を歩くのだが、今回歩いたルートは多少離れていても常に山々の頂上を踏み、ほぼ、前日に降りたルートを再び登り返す縦走ルートを歩くという道のりだった。
 
このルートを一気に歩く場合、食料補給も難しく、水場もほとんどないので、泊まりの装備は重くなる。きっと体力に自信のある方でないと、難しいだろう。

特に行程の中でも、天子ヶ岳から三ツ峠までの間は標高差もかなりあるので、相当体が慣れていても泊まりの装備と数日分の食料や水を背負って歩くのはとても辛い。

この富士山を1周するルートを歩くのであれば、比較的軽い装備で歩ける日帰り登山がおすすめだ。景色のいいポイントを狙って歩くのであれば、装備も少なくて済むし、食料補給や水の心配も少ない。

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▲パノラマ台から望む富士山

ルートの中で特におすすめしたいのが、中ノ倉峠から根子峠までの道のりだ。中ノ倉峠からの展望台から見る富士山も絶景なのだが、ここからの縦走路は、海外のトレイルのルートのように頂上に導かれるわけでもなく、ゆったりと山野に付けられた道を行く。
根子峠手前からは少し縦走路を外れるが、パノラマ台からの富士山は絶景だ。そして根子峠まで続くたっぷりとした道幅の登山道は、歩いていて本当に気持ちがいい。

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▲黒岳山頂手前のから見える河口湖と富士山

100年後も同じ富士山の姿を

「どんなに美しい山でも、登ってしまうとその姿は見えない」

これは、僕の持論だ。つまり周りを歩けば、その山の綺麗な姿を見続けながら歩くことができる。

近年、富士山は押し寄せる国内外の多くの観光客の影響でオーバーユーズになり、環境破壊も著しい。あえて動植物の生息域の少ない富士山を登るより、むしろ森林限界線を越えず、動植物の多く生息する富士山の周りを歩いた方が、富士山を、自然を、より楽しめるのではないだろうか。

また、周りを歩くことで富士山に集中するダメージを軽減できるのではないかと思う。

富士山の周りには、古くから人の営みがある。自然だけではなく、時にはその土地の歴史や文化に触れることで、さらに富士山の歴史的文化的価値にも気づくことができるのではないかと思う。
それは、必ずしも頂上を目指すことを目的としない、トレイルハイカーならではの自然へのアプローチであり、“歩く旅”の楽しみ方だと思う。

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【今回の宿泊スポット】
8日目:ふもとっぱら(静岡県富士宮市)
9日目:本栖湖いこいの森キャンプ場(山梨県南巨摩郡)
10日目:精進湖キャンピングコテージ(山梨県南都留郡)
11日目:古民家宿rootfield(山梨県南都留郡)
12日目:夢見る河口湖 コテージ戸沢センター(山梨県南都留郡)
13日目:三ッ峠山荘(山梨県南都留郡)

プロフィール

斉藤正史(さいとうまさふみ)
山形県在住。ロングトレイルハイカー。2005年にアパラチアン・トレイル、2012年パシフィック・クレスト・トレイル、2013年コンチネンタル・ディバイド・トレイルを踏破し、日本人2人目のアメリカ3大ロングトレイル踏破者トリプルクラウンナーとなる。日本国内でロングトレイル文化の普及に務め、地元山形ではロングトレイル整備の活動も行う。

INFORMATION

富士山ロングトレイル
富士山ロングトレイル公式サイト
https://fujisan-lt.jp/

Text, Photos:斉藤正史

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2021.10.06