富士山ガイドが自然の中を歩き富士山を一周するために作った、新たなトレイル『富士山ロングトレイル』をいち早くご紹介。スルーハイカー第1号を目指し、コロンビア・ロングトレイルハイクのアスリート&アンバサダーの斉藤正史さんがオープン前にチャレンジした模様をレポート! 第2回は、ついにロングトレイルに出発し、半周までたどり着くまでの道のりをお届けします。
富士山1周のスタートは、下吉田駅
『富士山ロングトレイル』を主催する、マウントフジトレイルクラブの太田さんに送っていただき、スタート地点の下吉田駅に降り立った。
初日は、ガイドの池川さんと、NPO法人・富士山世界遺産国民会議の大庭(おおば)さんに、ルートをご案内いただきながらのスルーハイク(一気に歩き通す歩き方)のスタートとなった。
富士山を良く知るガイドにとっては、新型コロナウイルスの影響により登山客が減っていくことに歯止めを掛けたいとの願いもあり、今回の『富士山ロングトレイル』を構想した、マウントフジトレイルクラブ代表の太田さんは“富士山山頂を目指さなくても楽しめるツアー作り”に乗り出した。
この構想には、『富士山ロングトレイル』をきっかけに、“また富士山を訪れる方に戻ってきてほしい”という想いが込められているのだ。
初日のルートはこれだ!
初日は、下吉田駅をスタートし、下吉田の町中を歩きながら杓子山(しゃくしやま)へとむかう。杓子山からは立ノ塚峠まで縦走路を歩く。立ノ塚峠からは一旦登山道で山麓まで下ると、道路に合流する。合流地点には、初日に泊まる予定の民宿セイコウ荘の方が迎えに来てくれるという行程だ。
初日の歩行距離は、約17km。2/3が山域なのでゆっくりもできないかなと思っていたが、さすがガイドの池川さん、完璧なペース配分だった。
杓子山からは、今回歩くルートがほぼ一望でき、更に正面に富士山が現れるという絶好のロケーションだ。天気は悪くない。そう思い、3人でラストの厳しい急斜面を登っていったのだったが、残念ながら富士山は厚い雲の中にその姿を隠していたのだった。
富士山の神様は、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)という女性だそうだ。花も恥じらう美貌の持ち主で、絶世の美女。言われてみれば、その山容の美しさからも、女性に見えなくはない。
雲に包まれた富士山を見ながら「僕のような山形から来たおじさんに、何度もカメラをむけられて恥ずかしかったのですかね」と、冗談半分、本音半分な話をしつつ、池川さんに地元ネタを教えていただく。そして、杓子山から忍野村(おしのむら)を眼下に歩いた。
立ノ塚で、池川さんと大庭さんと分かれ、僕は迎えに来てくれた宿のお父さんの車に乗って初日の宿にむかった。
回復しない天候
2日目、立ノ塚峠までを登り返し縦走路を歩いたのだが、富士山は、木花咲耶姫は、僕にその姿すらも見せてはくれなかった。
3日目、「山中諏訪神社 奥宮」から山中湖の奥に富士山が見える絶景ポイントがあったが、やはりぶ厚い雲に覆われていて、本当にこの雲の中に富士山があるのだろうか? というような眺めだった。
この日の夕方、民宿マルヤマに着きシャワーを浴び、洗濯を終え廊下を歩いていると、妙に外が気になった。窓を覗き込むと、ついに富士山がその姿を現していたのだった。
急いで外に出て、富士山が良く見える場所を求めて40分ほど歩いて巡った。沈む夕日にうっすらと照らされたその姿は、ただただ美しかった。3日間見えなかったことが僕の脳裏に余計に美しく浮かび上がったのかもしれない。