あと10年トーナメントプロでいるために
──最後に、間もなく始まる2023年シーズンの抱負を聞かせてください。
毎年変わらないのですが、目標は年1回優勝。それから生涯の目標も、これまでと変わらず一生かけてクラシック制覇です。
──それほどにクラシックは特別な大会ですか?
僕がアメリカを目指したのは、子どもの頃に遊んだ釣りゲームの舞台がクラシックだったからなんです。そこで勝つために人生を賭けているので、もし優勝できたら即隠居。畑でもやろうかなと。
──畑ですか?
畑はたとえ話ですが、隠居はあるかもしれません。何しろクラシックは、ライフチェンジャーと呼ばれるほどの、一生暮らせる賞金が手に入るビッグイベントですから。一方で、優勝経験者の数が少ないのもクラシックの特徴です。同じ人が複数回勝っている。それは、まぐれが通用しない事実を示しているんです。
──だからこそ実力を示す意味でも勝ちたいと。ですが、優勝したら本当に隠居できますか?
どうだろう……。そうなったらいいと思っていますが、今自分が身を置いている試合の環境、非日常的なストレスの現場は、かなり刺激的なんですよね。だから、相応のコストがかけられる。そこから抜け出せるかどうかは、クラシックで勝ってから改めて考えます。刺激的とは言いつつ、今年は決して安くないボートを全損させてかなり大変だったのですが。
──心中お察しいたします。来季は、新しいボードでエントリーですか?
はい。年内中にはアメリカに戻り、すべて自分で仕上げて臨みます。それと来季に向けて、帰国中にレーシック手術を済ませました。0.03だった視力が2.0。すごく見えるようになりました。
──それは大改善ですね。
先を見越しました。40代半ばには老眼になるから、あと10年トーナメントプロでいるために今やっておくべきだろうと。予想できる変化にはちゃんと準備しておきたいです。でも、まだ用意できていないのは伊達メガネ。メガネキャラで通してきたので、ただいま全力で探しています。
PROFILE
伊藤 巧(いとう たくみ)
国内で数々の功績を収め、 2019年より本場アメリカのB.A.S.S.ツアーに参戦、参戦初年度にしてバスマスター・セントラルオープン年間4位となる。2020年は最高峰であるエリートシリーズへ昇格し、2021年はセントローレンスリバー戦で見 事優勝を果たす。日本のみならず海を渡ったアメリカでも偉業を成し遂げるプロアングラー。
Twitter:@takumi_no_oheya
Instagram:@takumiitou4663
Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土