コロンビアと各業界の第一線で活躍するビジネスパーソン4名がコラボレーション! ビジネスシーンで活躍するバックパックが誕生。開発の裏側に迫る座談会をお届けします。
アウトドアに留まらない革新的なアイテムを開発してきたコロンビアが、次に手掛けたのがビジネスパーソン向けのバックパック。そして開発にあたっては、各業界の第一線で活躍する4名のビジネスパーソンとコラボレーション!それぞれの知識や視点をもとに意見交換を積み重ねて誕生した『スターレンジXPバックパック』が、2023年8月15日に販売開始。そこで今回は、コロンビアの開発担当・中尾さんと、商品開発会議に参加した4名のビジネスパーソンによる座談会を実施し、ビジネスシーンで活躍するバックパックの開発秘話に迫ります。
コロンビア×ビジネスパーソン4名によるバックパック開発
コロンビアのビジネスパーソン向けバックパックの開発に携わり、今回の座談会に参加したのは、白井屋ホテル株式会社代表取締役の矢村功さん、株式会社髙木ビル代表取締役の髙木秀邦さん、株式会社Vino Hayashi代表取締役の林功二さん、株式会社スティーブアスタリスク代表取締役の太田伸志さんという4名。それぞれが各業界をリードする会社の長として活躍している4名のビジネスパーソンが、コロンビアとコラボレーションをして、新たなバックパックにさまざまなアイデアをもたらしました。
座談会はコロンビアの開発担当・中尾さんの、開発当初のエピソードからスタート!
中尾さん:コロンビアのバックパックの技術を活かしたビジネスバックパックを作れないかというアイデアがあり、であればビジネスパーソンの方々にアイデアをいただきながら開発しようということになり、お声がけしたのが本日来ていただいた4名の方々です。ビジネスパーソン向けのバックパックというテーマに沿って、自分なりのアイデアでサンプルを作り、みなさんにお見せしたのですが……そこからさまざまな視点から貴重なご意見をいただきまして。現在に至るまで、10回ほどサンプルを作りました。
林さん:自分が今まで使ってきたバックパックは一長一短あって、すべてを気に入るということがありませんでした。なので、今回このお話をいただいたときはすごく面白そうだなと思いましたし、僕以外の方々がバックパックに対して、どういう考えを持っているのかにも興味がありましたね。
髙木さん:僕はこの中では、ファッション的にもアウトドアから距離がある側だと思います。普段もあまりラフな格好はしませんし、バッグに関してもわりとかっちりとしたバッグを使うことが多かったんですね。それもあって、コロンビアさんがビジネスパーソン向けのバックパックを作るというのを聞いて面白いなと思いました。あと改めて考えてみると、自分の中でもこうだったらいいなと思う部分があることに気がつきましたね。
矢村さん:僕は社会人になって15年ぐらいはほぼバックパックばかりを使う生活で、やっぱりみなさんと同じようにそれなりにストレスというか、「ここはいいけど、どこかイマイチ」といった印象をずっと抱えながら使ってきました。なので、最初の段階で「座談会のような形でお願いできますか?」と中尾さんから提案いただいたときは、とりあえずこれまでバックパックに対して溜め込んでいた個人的な鬱憤(うっぷん)を吐き出させてもらいましたね。アハハ!
太田さん:普段はブランディングやデザインの仕事をしていて、例えばビール会社さんの商品開発を手掛ける際にビールを作るところから見させてもらうことなどはありましたが、そういった、実際にモノを作るところから一緒に参加できる機会はあまりないですね。それもあって、最初にご連絡をいただいたときは、もう即答で「やります」と言いました。バックパックは物心ついて両手が自由に使える感動を知ってからずっと使っていますが、コロナ禍に入ってからは仕事の場所を選ばないようになり、なおさら便利だったのがバックパック。ただし、便利なサイズと機能を兼ね備えたバッグというものが、世の中にはあまりないことにも気づいたので、今回の企画にはすごく興味がありました。
開発で重視した、アウトドアの考え方とはまったく逆の発想
コロンビアがアウトドアのジャンルで培ってきたバックパックづくりのノウハウを活かしつつも、ビジネスパーソンに向けて新たな発想が求められた今回。コロンビア側から最初に提案したファーストサンプルの段階で、相談役である4名からは「もっとここをこうしたい」「このギミックはいらない」「こういうデザインはどう?」といった率直な意見が飛び交い、そこからはトライ&エラーの開発が始まりました。
中尾さん:最初はアウトドアバックパック的なアイディアを盛り込んだサンプルでのご提案をしましたが、「アウトドアでは便利かもしれないが、ビジネスでは不要なのでは」といったご意見を数多くいただきました。また、外側にポケットがついているアウトドアな見た目でしたが、実際のビジネスシーンでは「もっとシンプルな見た目」で使いやすいバッグを求めているとのご指摘がありました。そこからはデザイン的にそぎ落としながらも、機能的には利便性をどう高めていくのかが大きなテーマであり、最も難しかったところでもあります。
髙木さん:そういう意味では、最初から好き勝手な要望をたくさん言っていたと思います。
中尾さん:自分たちの中からは出てこないようなアイデアをたくさん出していただいた結果、まず見た目はできるだけシンプルにして、BOX型にしました。あとパソコンを使うときに膝の上に置いて使いたい場面があると思うので、フロント部分も平らに。ポケットに関しては、外に出さずに中に入れるという発想がベースです。ペットボトルもよく外側のサイドポケットに入れますが、それも見せたくないというご意見をいただいたので、中に分けて入れられる構造にしました。あとは海外への出張に行かれる方もいるということでしたので、財布なども内ポケットに分類して入れられるようにすることで、安全面もケアしています。さらにPCケースはマグネットとバックルの取り外し式になっているので、ちょっとした用事や仕事のときに持ち出せるようにしました。
太田さん:中の収納のアイデアはいろいろ出しましたね。小物類を収納できることに加えて、やっぱり大きなものを入れたいこともあるので、その分のスペースは作ってほしいということは伝えました。
中尾さん:スペースや取り外しという点に関しては、コロンビアのジャケットには“インターチェンジ”というアウターとインナーを分けられるシステムがあるのですが、そのコロンビアらしいアイデアを形に落とし込めたのではと思います。
矢村さん:見た目はすごいかっちりした印象ですが、背負ってみるとすごく軽い。シルエットもきれいですよね。
中尾さん:見た目の部分では、ベルトが余ってぶらぶらと垂れないようにもしました。あとは何と言ってもハンドル(取っ手)。初期のサンプルの段階では、アウトドア向けのバックパックなどでよくあるハンドルを付けていましたが、みなさまから「何かデザイン的にインパクトのある特徴があるといいよね」というご意見をいただき、試行錯誤を重ねた先に生まれたのがレザーのハンドルです。アウトドア向けのバックパックでレザーというのは、私としても初めての試みでした。ただ改めて高級なものも含めてビジネスバッグをリサーチした結果、レザーに辿り着き、使うレザーの選定から縫製の仕方までいろいろと調べて最終的に今の形に落ち着きました。
髙木さん:この開発が始まった当初から、男心に響くようなグッとくるポイントは作ってほしいと要望を伝えていたのですが、まさかレザーのハンドルで、ここまでいい具合に仕上がるとは思っていませんでした。
林さん:個人的にはできるだけ長く使いたいので、ボロボロになっていくだけではない良さが出そうですよね。
中尾さん:今回の開発で必要だったのは、アウトドアの考え方とはまったく逆の発想。アウトドアの場合、どちらかというと外側にいろいろなものを足していって利便性を高めるという発想がベースですが、今回はより見た目はシンプルに作りながらも機能を詰め込めるかを重視しました。その意味でたくさんの発見がありましたし、ハンドルなども自分の発想からは生まれてこなかったと思います。本当にいろいろなアドバイスをいただきながら、どう噛み砕いてプロダクトに落とし込むか。それが最もこだわった部分だと思います。
現代のビジネスシーンにおける“ウルトラライトパッキング”
この座談会の時点で、開発は最終段階! ボディーのカラーやハンドルの仕様などを含めてまだまだ進化する可能性は秘めつつも、ここまでの試行錯誤の結果、完成形はすぐそこまで近づいていました。
そして今回の開発を通して、企画を共にした太田さんは過程から“コロンビアらしさ”を感じたそうです。
太田さん:コロンビアさんのテクノロジーって見た目的にわかりやすいですよね。釣りのベストなどは外側のポケットで収納の機能性が一目瞭然だったり。ただ、今回のように見た目ではわからない内側に機能が増えていって、外側はよりシンプルになる方向の可能性もまだまだあるのかなと感じました。あとコロンビアさんは自然環境の危機から身を守るようなアイテムをこれまで作ってきたと思いますが、 例えば現代のビジネスシーンにおいて、背中が濡れたままパーティー会場に行くとか、バッグの中から名刺をすぐに取り出せないなどは、ある意味で危機的状況じゃないですか。その意味で、コロンビアのルーツやテクノロジーと、現代のビジネスパーソンに求められる利便性がしっかりとリンクして生まれたのが、今回のバックパックなのかなと思います。
さらに矢村さんは、今回誕生したバックパックと現在のアウトドアの潮流がリンクしている部分として、“ウルトラライトパッキング”というキーワードを挙げてこう語りました。
矢村さん:アウトドアでは近年、ウルトラライトパッキングという潮流があって、個人的に今回のバックパックは、ビジネスパーソンにおけるそれなのかなと感じました。ウルトラライトパッキングは結局のところ、荷物が軽くて無駄がなくなった方が快適に長距離を歩けるし、それだけ自然を楽しむことができるよねっていう考え方。それはビジネスの世界においても同じところがあって、バックパックって両手が空くし、機能的だし、体も歪まない、というメリットがある。ただ、やっぱり多くのプロダクトは見た目的にゴテゴテといろいろなギミックが付いているんですよね。ビジネスというシーンでの最適を求めたら、今回のようなアウトドアの機能的なテクノロジーがふんだんに詰まっていながら、デザインは研ぎ澄まされたものなのかなと感じました。